tern RIPのボトムブラケット(BB)をホローテック IIに換装し、いよいよシマノ ALFINE FC-S501のクランクセットのインストールを行います。ただし、チェーンリングをRace Faceのナローワイド44Tに交換し、できるだけRIPのオリジナルスタイルを踏襲します。
なお、BBをスクエアテーパーからホローテック IIに交換した、前回の記事はこちら。
tern RIP 交換クランクの最適解?シマノのニッチなシングルクランク
シマノ ALFINE FC-S501とは?
シマノのフロントシングルクランクに、ALFINE(アルフィーネ)FC-S501というニッチな製品があります。このクランクは、tern RIPのホローテック II化を安価に行う最適解か?と考えてしまうほど、奇妙に各部がRIPの純正クランクの特徴と一致します。
そもそも、クロスバイクに特化した激レア仕様のクランクが、まさかのシマノからリリースされていたとは。これぞ、灯台元暗し。
それでは次から、ALFINEのクランクセットの各部を細かく見てまいりましょう。
PCD130の5アームクランク
右のドライブ側クランクには、ヒトデを思わせる5本のアームがニョキニョキと生えており、それぞれの先端に空いた穴で、チェーンリングのボルト止めを行います。これら、5つの穴の中心を結ぶ円の直径を、PCD(欧米ではBCD※)と呼びます。PCD130は、この円の直径が130mmであるのを意味します。
※PCD = Pitch Circle Diameter, BCD = Bolt Circle Diameter
PCD130の5アーム仕様は、RIPのオリジナルクランクと奇妙にシンクロしますが、ロードバイクのジャンルにおいては、もはや完全に廃れた旧規格のデザインです。良く言えば、レトロなオールドスクール系のクランク?ピストバイクのジャンルにおいては、今だ絶大なる愛好者の存在する規格です。(※)
※厳密には、ピストの5アームクランンクは、PCD144mmが主流のようです。
39T、42T、45Tから選べるバリエーション
ALFINEのクランクセットは、チェーンリングの歯数が39T、42T、45Tの3つから選択が可能です。RIP純正のチェーンリングは、歯数が44Tのナローワイド仕様(※)。ALFINEでの近似値は45Tですが、自分はチェーンリングを別のに交換してしまうので、中間の42Tを購入しました。
※幅の広い歯と狭い歯が交互に並んだチェーンリングのデザインを、ナローワイドと呼びます。ディレイラーの無いフロントシングルの運用で、チェーンが脱落しにくい構造です。2019年モデルより、tern RIPのチェーンリングもナローワイド化されましたが、材料が鉄製で重いのが難・・・。
通勤自転車に嬉しいバッシュガード付き
残念ながら、ALFINEのチェーンリングはナローワイドではありませんが、その代わりにバッシュガードが付属します。通勤でクロスバイクに乗る人にとっては、嬉しい仕様と言えるのでは?チェーンがフロントの外側に脱落しづらく、また、チェーンオイルでズボンの裾が汚れません。
ALFINEのバッシュガードは軽量なアルミ製で、巷のクロスバイクに良くあるプラスチッキーでチープな見てくれとも無縁です。
カラーはシルバーと黒があります
ALFINEのクランクセットは、シルバーと黒の2色展開。まあ、RIPに取り付けるのであれば、黒を選びますが・・・。ちなみにRIPの純正クランクは、無骨なマットブラックですが、ALFINEはツヤツヤのシルキーブラック。このあたり違いは、受け手の好みが分かれるかもしれません。
クランク長は170mmのみ
気になるクランク長は、170mmの一択となります。乗車に適した身長は、実質170cm〜くらいでしょうか?小柄な人は、シートポストの上げ下げで、なんとか工夫を。ちなみに、RIPの純正クランクもサイズは170mm。ALFINEのクランク長が、ドンピシャで一致します。
BBシェル幅は68mm
ALFINEのクランクセットに対応したBBシェル幅は、ロードバイク規格の68mmです。対して、MTB規格のフレームは、BBシェル幅が73mmなのでサイズに注意。ALFINEではクランクのシャフト長が5mm足りません。
さらに嬉しい、ホローテックII BBが付属
ALFINEのクランクセットには、ホローテック IIのBB(型番:BB-RS500)が同包されます。わざわざ別売り品のBBを購入せずに済むのが、なんとも嬉しいコスパの良さ。
Alfineをバラして、Race Face 44Tを取り付ける
バッシュガードとチェーンリングの取り外し
右のドライブ側クランク、5本のアームの外側と内側には、バッシュガードとチェーンリングがフィキシングボルトで固定されています。チェーンリングの裏側のボルトにペグスパナを掛け、外側のバッシュガード面のボルトを5mmのアーレンキーで緩めて外します。
5本あるフィキシングボルトを同様の手順で外すと、バッシュガードとチェーンリングがクランクアームから離脱します。
蛇足ながらALFINEは、2枚の歯数の異なるチェーンリングをアームの内側と外側に固定して、簡単にフロントダブルのクランクに早変わりする構造なのか?PCD130のチェーンリング自体が、今や極めて入手性に難ありですが・・・。
Race Face 44Tの取り付け
次に、あらかじめWiggle.jpで購入しておいた、
ALFINEに付属のフィキシングボルトでは少々寸法が長いため(バッシュガード分の厚みが考慮されている)、KCNCのシングル用フィキシングボルトを追加で購入しました。取り付けが完了したのが、下の写真。それぞれのパーツのデザインが見事にマッチして、なかなかに好印象。
ちなみにRace Faceは、カナダのヴァンクーヴァーを拠点とするコンポーネントのブランドです。公式サイトはこちら。
KCNCのフィキシングボルトは、5mmと8mmのアーレンキーで着脱が行える気の利いた設計。内側のフィキシングボルトを固定するペグスパナが要らず、クランクをフレームに取り付けたままの状態でも、フィキシングボルトの着脱が楽に行えます。
以上の作業にて、5アーム、PCD130、44T ナローワイド、そしてクランク長170mmの条件をクリア。RIPのオリジナルを、ほとんど踏襲したクランクセットの完成です。ただしBBは、スクエアテーパーからホローテック IIにアップグレードされた格好となります。
それでは、tern RIPに取り付けを行いましょう
とにかくクランクの着脱が簡単なホローテック II
右クランクの取り付け
スクエアテーパーBBに比べて、とにかくクランクの取り付けが簡単なホローテック II規格。ドライブ側の右クランクに関しては、シャフトをBBの右ワンに手で押し込むだけです。念のためクランクの中心に当て布をして、ゴムハンマーで軽く数回叩いてやれば完璧。
左クランクの取り付け
左のBBワンからクランクのシャフトが突き出したら、そちらへ左クランクを差し込みます。BBワンの内部には、出荷グリスがてんこ盛りに塗られているので、あまりにもはみ出た分は拭き取りましょう・・・。
左クランクの軸受には細いスリットが切ってあり、間に薄い金属の爪が挟まれているので、マイナスドライバーなどでスリットの中へ押し下げます。続いて、2本のボルトを5mmのアーレンキーで交互に締めます。先に片方のボルトだけを固く閉めすぎると、スリットが均等に閉じないので注意。
最後に樹脂製のキャップを専用の工具で取り付け、作業は完了です。しかし、こんなプラスチックの蓋みたいな工具を、数百円で別売りしているシマノって・・・。
チェーンの再取り付けと、リアディレイラーの再調整
9速チェーンを張る
Race Faceのチェーンリングは対応チェーンが9速以上となるため、リアディレイラーは8速のクラリスのまま、9速のチェーンを張りました。もちろん、カセットスプロケットも8速で据え置き。シマノ製チェーンの内幅は8速が2.4mm、9速以上は2.2mmと異なるようですが、そこは自己責任の運用ということで、しばらく様子を見てみます。
リアディレイラーの再調整
クランクをtern RIPの純正からALFINEに交換したため、おそらくチェーンラインが数ミリずれて、リアディレイラーの再調整が必要でした。とはいえ、8速のクラリスなので、それほど手間はかかりませんでした。
ちなみに、シマノの公式によるALFINE シングルガードのチェーンラインは、42.7mm。tern RIPの純正クランクは、メーカー公称値がないので不明です。
以上で、RIPのクランク交換作業は終了ですが、次は実走行を100kmほど行い、実際の乗り心地や、あるいは何か不具合が発生しないかを記事に書きたいと思います。
比較:クランク交換 軽量化のまとめ
tern RIP 純正クランク vs シマノ ALFINE + Race Face 44T
下に、今回のクランク交換を行ったそれぞれのパーツを計量し、表にまとめてみました。
tern RIP 純正クランク | シマノ ALFINE + Race Face 44T | 重量差分 | |
右クランク | 669g | 531g | -138g |
左クランク | 248g | 250g | +2g |
BB | 280g | 90g | -190g |
クランク固定ボルト | 26g | – | -26g |
総重量 | 1,223g | 871g | -352g |
まず目につくのが、右クランクの重量差138g。ただし、左クランクの重量差はわずか2g(純正が軽い)と拮抗しているため、tern RIP 純正の右クランクは、鉄製のチェーンリング(磁石が吸い付きます)がかなりの重量を稼いでいるのではないかと思われます。
続いて、スクエアテーパー型とホローテック IIのBB重量差が歴然。BBの交換だけで、190gもの軽量化がなされています。まさに、構造的な宿命が表れています。総じてRIPの純正は、クランクセット周りが1.2kg超えの辛い結果に・・・。
また、昨年末のパンクに悩まされた挙句、前後のタイヤをコンチネンタルのGatorSkinに履き替え、この段階で310gの軽量化に成功しています。タイヤとクランクセットの交換を合わせて、約650gも軽量化した我がtern RIP。
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