tern RIP クランクの交換① BBをホローテック IIに換装する

tern RIP クランクの交換① BBをホローテックIIに換装する
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tern RIPのボトムブラケット(BB)は、もはや旧規格の代表、安定のスクエアテーパー型。今でもママチャリからクロスバイクまで、多くの自転車に採用されている現役バリバリのレガシーパーツですが、これをシマノのホローテック II(型番:BB-RS500)に換装し、クランクの交換を行う作業の前編です。

それでは、tern RIPのクランクセットをバラします

大きく分けて5つの工程があります

1:8速チェーンをカットする

変速スピードの異なるクランクセット、および、リアディレイラーとスプロケットに換装を行う場合、同時にチェーンの交換が必要となります。詳細は後述しますが、今回はRIPに9速対応のクランクセットを取り付けるため、まずは、オリジナルの8速チェーンをカットして、最終的に9速のチェーンを張ります。

tern RIP:8速チェーン切断の儀
8速チェーン切断の儀

この作業は、チェーンカッターという専用の工具を用いて行います。

2:ペダルレンチでペダルを外す

現在使っているペダルを新しいクランクセットに移植するため、ペダルレンチで左右のペダルを取り外しを行います。ペダルのシャフトにはネジ山が切ってあり、ここをねじ込んでクランクの先端に取り付けが行われますが、ペダルのネジは少々の曲者です。

まず、ペダルレンチをかけるシャフトの部分には平面の台座があり、その幅は15mm。自転車特有のネジ規格で、ホームセンターのスパナ工具売り場では、あまりお目にかかるサイズではありません。したがってペダルの着脱を行うには、モンキーレンチか、あるいは専用のペダルレンチが必要です。

また、右ペダルのシャフトは正ネジなので左回転でゆるみますが、左ペダルは逆ネジ。普通の感覚でシャフトネジを左に回すと、ぎゅうぎゅうと余計な締め込みが行われ、最悪、ネジ山をダメにしてしまいます。

tern RIP:左右ペダルの取り外し
左右のペダルをペダルレンチで取り外し。くれぐれも回転の向きには気をつけましょう。ペダルの固定ネジがある程度緩めば、後は指で回せます。装着時にはグリスを塗るのを忘れずに。

ペダル着脱のまとめ

  • ペダルシャフトのネジ台座は幅15mm
  • 左ペダルは逆ネジ →左回りで締まり、右回りで緩みます
  • 右ペダルは正ネジ →右回りで締まり、左回りで緩みます

つまり、クランクを漕ぐほどペダルのネジが締まるよう設計されている訳ですな。

3:クランクのフィキシングボルトを外す

スクエアテーパーの名が表すごとく、BB軸の両端はやや先細りした正方形の形状をしており、ここへクランクの付け根がフィキシングボルトを締めて圧入されています。フィキシングボルトは、クランクの左右ともに正ネジで、8mmのアーレンキーで左に回転すると緩んで外れます。

tern RIP:左右のフィキシングボルトの取り外し
左右のフィキシングボルトは正ネジです。8mmのアーレンキーを差し込み、左回しで緩みます。

フィキシングボルト着脱のまとめ

  • フィキシングボルトは、左右ともに正ネジ →右回りで締まり、左回りで緩みます
  • 適合するアーレンキーは8mm
  • クランクの付け根は、フィキシングボルトを締め込んで、スクエアテーパー軸に圧入されている
  • ただし、フィキシングボルトを外しただけでは、スクエアテーパー軸に圧入されたクランクは外れない(次項参照)

4:コッタレスクランク工具でクランクを取り外す

クランクの付け根は、上述のフィキシングボルトを締め込み、先細りのBB軸にガッツリと圧入されています。なので、これを取り外すためには、さらにコッタレスクランク工具(コッタレスクランク抜き、またはリムーバー)と呼ばれる専用工具を使います。クランクは、BB軸へ強力に押し込まれているため、とうてい手の力で外すのは無理。

なお、この工具の使い方は圧倒的に動画の解説が分かりやすいので、YouTubeで「コッタレスクランク 外し方」と検索してみてください。参考になる動画が、たくさん出てきます。

tern RIP:コッタレスクランク工具の使い方
左:目一杯に緩めたコッタレスクランク工具の片側を、クランクの軸穴に指でねじ込みます。右回しの正ネジです。 右:コッタレンスクランク工具の手前を、遊びがなくなるまで指で締め、さらに16mmスパナを右回ししてゆっくりと締め込みを行います。クランクがじわじわと手前に押し出されて脱落します。
tern RIP:右ドライブ側のクランクが外れる
右のドライブ側のクランクが外れ、スクエアテーパーBBの軸が顔を出しました。出荷グリスがこんもりと塗られています。左側のクランクも同様の手順で取り外します。

コッタレスクランク使い方のまとめ

  • コッタレスクランクを外すためだけの専用工具、逆にクランクの取り付けは、上述のフィキシングボルトを締めて行う
  • まずは、先端のネジ山を右回りでクランクに差し込み、しっかりと取り付けを行う
  • 続いて、手前のネジ台座を右回りに締め付け、クランクをゆっくり押し出すように取り外す
  • 適合するスパナのサイズは16mm(シマノ製工具の場合)

5:スクエアテーパーBBを取り外す

そして最後に、ラスボスの登場。スクエアテーパーBBです。悪名高き固着の王様ですが、自分のtern RIPは昨年の4月に購入して以来、常に室内保管をしていたためか?拍子抜けするほど、あっさりと取外せました。使用した工具は、EツールのBB抜きと24mmのメガネレンチだけ。

tern RIP:BB左ワンの取り外し
BBの取り外しは、左ワンから着手します。こちらは正ネジなので、EツールのBB抜き工具にメガネレンチをかけ、左回しで緩みます。レンチに少し力をかけたら、あっさりと回転したのでやや拍子抜けすることに・・・。
tern RIP:BB右ワンの取り外し
続いて、右ワンに取り掛かります。右ワンは逆ネジなので、レンチを右回しして緩めます。
tern RIP:取り外しの完了したtern RIPのスクエアテーパーBB
あっさり取り外しが完了してしまったtern RIPのスクエアテーパーBB。台湾のVP製で型番はVP-BC73、シェル幅68mm、軸長110.5mm、重量は280gでした。フロントシングル用かと思われます。

ちなみにネットでは、多くの自転車弄りの諸兄がフレームに固着したスクエアテーパーBBの取り外しに難儀した挙句、工具とBBをボルトで固定してレンチをかけたり、レンチをゴムハンマーでぶっ叩いたり、レンチの持ち手を鉄パイプで延長するなどして苦戦をしております。クレ556をBBにぶっかけて、一晩放置したりとかね。

スクエアテーパーBB取り外しの難易度は、自転車の保管状況や経年の具合によって、まさにケースバイケースです。要素が多すぎて一概に全部のまとめ項目を作れず、ブログのネタ的には少々歯がゆい結果に・・・。

スクエアテーパーBB着脱のまとめ

  • ロックリングの左ワンから外す、逆に取り付け時は右ワンから
  • 左ワンは正ネジ →右回りで締まり、左回りで緩みます
  • 右ワンは逆ネジ →左回りで締まり、右回りで緩みます
  • BBがフレームに固着している場合、対処法は実にさまざま・・・

続いて、シマノのBB ホローテックIIを取り付けてみましょう

BBシェルに左右のワンをねじ込むだけの簡単インストール

クランクセットのバラかしから始まり、無事にスクエアテーパーのBBを取り外したtern RIP。BBのシェル幅は、ロードバイクで一般的な規格の68mmなので、ホローテックIIの取り付けなど容易いものです。BBシェルの両側へ、左右のワンを専用工具でねじ込むだけ。

tern RIP:シマノ ホローテックIIの重量を計測
こちらが、今から取り付けを行うホローテックIIのBB。重量を量ると90gと表示されますが、内部に出荷グリスがてんこ盛りに塗られているため、実質80gくらいか?RIPのスクエアテーパーBBと比べて、約200gもの軽量化ができます。

上の写真のBBは、シマノのALFINE(アルフィーネ)FC-S501 クランクセットの付属品で、型番はBB-RS500。シェル幅は68mmなので、RIPへの取り付けに心配はありません。

それでは、作業に取り掛かります。まず、スリーブの被せてある左ワンのネジ山にグリスを塗り、BBシェルに手でねじ込んでやります。左ワンを表す「L」の文字と回転方向が矢印で示されているので、こちらを間違えないように。

ワンが手で回らなくなったら、ホローテック II専用のレンチでゆっくりと締め込みを行います。最後は馬鹿力でトルクをかけず、いい塩梅で終わらせてください。うっかりネジ山を舐めたら、BBも自転車も詰んでしまいます。

tern RIP:シマノ ホローテックII 左ワンの取り付け
取り付けは、スリーブの被せてある左ワンから行います。左ワンは正ネジです。

同様の手順で右ワンを取り付けたら、作業は完了です。グリスのついた手でiPhoneを汚さないよう、注意して写真を取りながら作業を行ったため、えらいこと時間がかかって疲れました・・・。

tern RIP:シマノ ホローテックII 右ワンの取り付け
同様の手順で右ワンも取り付けて、BBの交換作業が完了。右ワンは逆ネジです。

ホローテックII BB着脱のまとめ

  • 左ワンは正ネジ →右回りで締まり、左回りで緩みます
  • 右ワンは逆ネジ →左回りで締まり、右回りで緩みます
  • 左右のワンにはLRの表示と取り付けの回転方向が矢印で示されているので、見間違えのないように

次回はいよいよ、クランクのインストールを行います。続きはこちらへ。



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おまけ:ここが残念 スクエアテーパーBB

tern RIPから取り外した、オリジナルのドライブ側の右クランク
tern RIPから取り外した、オリジナルのドライブ側右クランク。スクエアテーパータイプなのを除いて、特に不満のない良品なのですが・・・。

スクエアテーパーBBの欠点をまとめてみると

そもそも、とにかく重たい問題

スクエアテーパーBBにはいくつかの欠点がありますが、何と言ってもその代表格は重量。クランクの付け根には、約280〜300gの重量級パーツがねじ込まれ、フレームの一番低い位置に鎮座しています。

BB軸長とクランクセットの組み合わせが、不可解すぎる問題

さらにスクエアテーパーBBは、同じ型番の製品に複数の軸長(シャフトの長さ)が混在します。そのため、クランクセットの交換を行うと、元から付いていたのBBの軸長との組み合わせによっては、チェーンライン(※)が変わってしまうケースがあります。このあたりの事情が、実にややこしい事この上ない・・・。

※フロントシングルのクランクであれば、フレームの中心からチェーンリングの歯の先端までの幅を言います。目安はだいたい、42mm前後でしょうか?ちなみに、シマノ推奨のチェーンラインは、フロントダブルのロードバイクで43.5mmです。フロントシングル車のダブル化を行う場合、やや軸長の長いBBに交換する必要があります。

チェーンラインがあまりにも大幅に変わってしまうと、チェーンが脱落しやすくなったり、変速が正常に行えなくなるなどの不具合が生じるため、クランクを製造するメーカーに適合するBBの軸長を問い合わせるのがベストです。

ただし、AliExpressとか、Amazonで見つけた良くわからない中華クランクの類に関しては、いったいどこの窓口がコンパチブルなBBの軸長を教えてくれると???

ねじれ剛性に難あり?

スクエアテーパーBBのシャフトの形状は、一番太い部分が13.5mm程度の先細り正方形です。この細くて短いシャフトへ、左右のクランクが力づくで圧入されています。BBとシャフトが一体化したカセット構造は、今時の観点からすれば、クランクを漕ぐ運動に対するねじれ剛性が頼りなく、非効率的なパワーロスが起こり得ます。

対して、シマノのホローテック II規格のシャフトは径が24mmあり、ドライブ側の右クランクと一体化されています。SRAMのBB規格、GXPのシャフトは右ワンの内径が24mmで、左ワンの内径が22mmです。さらに同社の新しい規格、DUB(ダブ)のBBワン内径は、28.99mm。キャノンデールの規格、BB30に関しては、BB内径が30mmもあります。

まさにクランクのシャフトは、太さが正義とばかりに剛性を高める方向へ開発が進み、BBはシャフトの軸受けとなる左右のワンに分離され、それぞれの役割分担がなされています。

屋外駐輪は要注意、BBがフレームに固着する問題

そして最後に、ことさら悪名高いのがこれ。屋外駐輪した自転車のスクエアテーパーBBにまつわる、最大の懸念事項。自転車が積年の風雨にさらされた挙句、BBのネジ山が錆びてフレームにガッチリと固着し、これを取り外すのに一大苦戦を強いられた。そんなエピソードは、ネットを探せば枚挙にいとまがありません。

スクエアテーパーBBにまつわる問題で頭を悶々と悩ませるくらいであれば、いっそ、ホローテック IIなどの新しい互換規格のBBに換装し、クランク周りを総とっかえしてしまうのも手であります。

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