スポーツバイク乗りが抱える永遠のジレンマ。それは、キックスタンドに関する問題。ことさらクロスバイクにとっては、相反する自転車の美観と実用性を天秤にかけた答えの出ない無限の問答が続きます。
今日はそんな、モヤモヤとした深い煩悩を解決すべく、ミノウラのペダルスタンド付き携帯工具「HPS-9 Get’A」を導入しましたというお話です。
重量の増加、美観の低下、美意識?が邪魔をするスタンド問題
スポーツバイク、とりわけ、ロードバイクをこよなく愛する諸兄にとって、キックスタンドの取り付けなど「もっての外であり得ない」アイデアでありましょう。
まずは、重量を気にする向きへの問題。一本足のキックスタンドの重量は、だいたいの製品が250〜300gオーバー。これは、ロードレース型の軽量なクリンチャータイヤの1本分(約200〜240g)を、軽々と超える車体重量の増加を意味します。
そして続いて、自転車の美観の低下から、自転車乗りとしての美意識が邪魔をする問題。例えば、お値段20万円超えの高級な完成車でも、チェーンステーのクイックリリース付近にキックスタンドを取付ければ、見た目が一瞬で「その辺のルック車」へと早変わりします。
美観と実用性のギリギリの中間を取った選択肢として、センタースタンドがありますが、これは取り付けが非常にシビア。
まずは、走行時のスタンド跳ね上げた状態を考えてみましょう。チェーンステーより外側にスタンドの「棒」がはみ出すほど、回転するクランクの先端が干渉する可能性が高まります。こればかりは、スタンドとフレーム本体の現物合わせを行うまで予測がつかず、Amazonで迂闊な製品をポチる訳には参りません。
次に、フレームへの固定に関する問題。センタースタンドは、BB後方のチェーンステー2本を上下からクランプで挟んで固定します。スタンドを跳ね上げたり、下ろしたりする際、クランプの固定が弱いと、スタンドの角度がいとも簡単にズレて、後々の悩みのタネとなります。
よって、相当なトルクを持ってクランプの締め付けを行いますが、フレームを厚手のゴム片などで保護してやらないと、スタンドの取付け位置にガッツリと擦り傷がつきます。カーボンフレームにおいては、こんな馬鹿力に耐える強度があるわけもなく、簡単にへし折れてしまうでしょう。
ノーキックスタンド車の非実用問題
ロードバイクはそもそも、走行に特化したスポーツ機材であるため、キックスタンドの類は無用の長物であるのは分かります。しかしながら、クロスバイクは事情がガラリと異なります。クロスバイクは街乗りを楽しんだり、その辺をゆる〜くポタリングしたりといった、いわば、日常の足の延長線上にその立ち位置の基本があります。
いつもの通り沿いに気になるカフェがあったり、喉が渇いて近場のコンビニに寄りたくなったりしても、RIPにスタンドが付いていない(から駐輪できない)という理由だけで、何度その前を素通りしたことか・・・。
前カゴ、泥除け、スタンドの「実用三大パーツ」を持たないクロスバイクは、60点のポンコツ車でっせ。これは、自転車系YouTuberのB4Cさんの言葉の引用でありますが、自分も泥除けを除いて、この考えには概ね同意するところであります。
出典:クロスバイク初心者にありがちなイタいあるある カスタム・整備編
「ペダルスタンド」という解決策でしばらく運用を試みる
立てかけ駐輪の悩ましさを列挙いたしますと
それでは、キックスタンドを持たないクロスバイクのRIPにとって、これまで自分が経験した「立てかけ駐輪」にまつわる悩ましさ、そして考えうるリスクなどを以下に挙げ連ねます。
- 立てかけ駐輪により、フレーム、ペダル、クイックリリースのレバーなど、あちこちに擦り傷が付く(関連記事)
- 適当な駐輪場所がないため、泣く泣く素通りするシチュエーション多し(通りすがりのコンビニ、飲食店など)
- RIPを立てかける場所がなく、気軽に降りて写真を撮れないロケーション多し
- ワイヤーで柱にロックをしないと、風で倒れるリスクがある
- 地球ロックをしていないと、簡単に盗難されそう
- 時と場合によっては、迷惑駐輪となりうる(スーパーで金属のポールにRIPを立てかけようとしたら、すぐに警備員が現れて怒られました。どうやら返却カートの置き場だったらしく、即座に退散をいたしました。)
どうです?問題ありありでしょう?
で、久しぶりにAmazonのパーツ徘徊で見つけたのが、これ。ミノウラのペダルスタンド、HPS-9 Get’A(ゲタと読むそう)です。正確には、ペダルスタンドに携帯工具とタイヤレバーがセットになったマルチツール。工具類の使い勝手はともかく、RIPのペダルスタンドとして、しばらく運用を行ってみます。
ミノウラ HPS-9 各部の紹介
それでは、このHPS-9の各部を細かく見ていきましょう。
写真左:昭和の子供のオモチャのような、ちょっとレトロでスペーシーなデザインの台紙が付いてきます。右上の日本国旗が実に誇らしい、メイド・イン・ジャパンです。
写真右:気になる重さは、163gとなかなか軽量。これなら、ズボンのポケットに入れても気にならず、必要な時にさっと取り出せます。
写真左:台紙から取り外した本体。
写真右:内部には、2、3、4、5、6mmのアーレンキーとプラスドライバーが、折りたたんで格納されています。これらの工具類はきちんと面取り加工がしてあり、決して悪い作りではありません。
組み立て方:本体の左右側面にあるタイヤレバーを外して、工具の反対側にある三角形の台座を起こします。
三角形の台座にタイヤレバーの先端を差し込み、組み立てるとこんな感じになります。
写真左:ペダルの底が当たる面には、滑り止めのゴムが貼ってあります。
写真右:工具側にあるフックを起こして、ペダルのシャフトに引っ掛けて使います。
なお、スマホのスタンドにもなりますが、これはある種の微笑ましいオマケ機能(笑)。
ミノウラのサイトに取扱説明書のPDFがあるので、参考にリンクを張っておきます。
それでは、tern RIPでポタリングへと出かけましょう
tern RIPが自立した!
さて、早速ですが、ミノウラ HPS-9の使用感をレビューすべく、RIPに乗って近場の公園まで出かけてまいりました。確かにこのペダルスタンド、手早く準備ができてRIPが自立をいたします。下の写真のように。
これまでRIPのこんな写真や、
はたまた、こんな写真は撮れたことがなかったので、感動を覚えます。
しかし、スタンドとしての使い勝手は?
しかしながら、ミノウラ HPS-9のスタンド機能、実にギリギリかつ絶妙なバランスでペダルの下から車体を支えているため、下のようなシチュエーションではいとも簡単にその役割が破綻します。
- 地面がわずかでも傾斜している:タイヤが回転してしまうとクランクも動いてしまうので、バランスが保てません。
- 風が吹いている:風を受けて少しでも車体が揺れると、クランクが動いて(バランスが崩れ)自転車が倒れます。
- 周囲に自転車が止まっている駐輪場:周囲の自転車にちょっとでも車体に接触されたら、クランクが動いて自転車が倒れます。
- 周囲に子供がいる:背の低い子供が自転車に近づこうものなら、それだけで危険。
つまり、携帯できる撮影スタンドか?
というのが、正直な感想。少しでもクランクが動いてしまえば、それは致命的。怖くてRIPの側から離れることができません。★の数で点数を言えば、自分的には2.5くらいか?
結局のところ、周囲に迷惑のかからないシチュエーションかつ、フレームに傷がつかないよう、立てかけ駐輪を行うのが無難というのが、今日の結論。下の写真のようにね。
2020年12月3日(木)関連記事追加:ついにキックスタンドを取り付けてしまったというお話です。